ワクチン接種を採用条件とすることの問題点

ワクチン接種を採用条件とすることの問題点

<法令の規定>

法律上は「予防接種を受けるよう努めなければならない」と定められています。〔予防接種法第9条第1項〕

つまり、ワクチン接種を受けることは「努力義務」とされています。

接種を受けるかどうかは、個人の自由意思に任されているのであって、国や企業が強制できないことは明らかです。

<厚生労働省の指導>

厚生労働省の新型コロナワクチンQ&Aは、「新型コロナワクチンの接種を望まない場合、受けなくてもよいですか」という問いに対して、次のように回答しています。

新型コロナワクチンについては、国内外の数万人のデータから、発症予防効果などワクチン接種のメリットが、副反応などのデメリットよりも大きいことを確認して、皆さまに接種をお勧めしています。しかしながら、接種は強制ではなく、あくまでご本人の意思に基づき接種を受けていただくものです。接種を望まない方に接種を強制することはありません。また、受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。 職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないよう、皆さまにお願いしています。仮にお勤めの会社等で接種を求められても、ご本人が望まない場合には、接種しないことを選択することができます。

そして、いじめや嫌がらせの相談窓口として総合労働相談コーナーを紹介し、法務省の人権相談窓口も紹介しています。

「接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないよう、皆さまにお願いしています」というのが国の方針であり、これに沿って行政指導が行われていることは明らかです。

<ワクチン接種を採用条件とすることの可否>

職業選択の自由と財産権から、企業の営業の自由が認められています。〔日本国憲法第22条第1項、第29条〕

そして、この営業の自由と民法の基本原理である契約の自由から、企業には採用の自由があるとされています。

しかし採用については、応募者の基本的人権を尊重し、適性や能力で判断することが企業に求められています。

このことから、性別や年齢による差別は、原則として許されないことになっています。

もっとも、ワクチン接種を採用条件とすることを禁ずる法律はありません。

厚生労働省は、接種を採用条件とすることについては「その理由が合理的か求人者が十分に判断し、応募者にあらかじめ示して募集を行うことが望ましい」としています。

これに従って、企業がワクチン接種を採用条件として明示し、その理由を明確にした場合に、求職者の多くがこれに納得できなければ、企業のイメージダウンにつながりますから、説得力のある理由を示すよう細心の注意が必要です。

<ワクチン接種を隠された採用条件とするリスク>

ワクチン接種が採用条件であることを隠して募集した場合でも、採用選考のどこかの段階で、応募者にワクチン接種について確認することになります。

この段階で、ワクチン接種が採用条件であることは、応募者に知られてしまうことになります。

しかも、なぜワクチン接種を採用条件としているのか全く説明が無いわけですから、ネットのクチコミ情報などによって、企業の評判が低下するリスクは大きいものと考えられます。

こう考えると、求人の段階で、ワクチン接種を必須としている合理的な理由を示しておくほうが、リスクが少ないといえるのではないでしょうか。

社会保険労務士 柳田 恵一