カテゴリー: 人事管理

退勤後のメールも「業務時間」 

<ある判決>

平成27(2015)年に長時間労働で過労死した服飾雑貨メーカーの男性の遺族が起こした訴訟で、東京地裁が令和3(2021)年10月28日、会社側に約1,100万円の損害賠償を命じる判決を出しました。

退勤後でも、メールの送信やパソコンのファイル更新の時刻が確認できれば、「業務時間」と判断できるという遺族側の主張を認めたものです。

しかし、このことから「退勤後のメールも労働時間に該当する」と短絡的に一般化できるわけではありません。

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

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リアル雑談の効用 

リアル雑談の効用 

<リアル雑談>

オンラインではなく、直接顔を合わせて行う雑談を「リアル雑談」と呼ぶことにします。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、働き方改革の一環で、在宅勤務などのリモートワークが増えてきたため、リアル雑談が減ってしまいました。

オンライン雑談も可能なのですが、相手の様子が判らないので、簡単には声が掛けられません。

それでも、事実の伝達であればメールの方が確実で便利ですし、意思の伝達についても相手が内容を認識できますから、それほどの不自由は感じません。

<個別の雑談>

リアル雑談の利点は、何より相手の理解度や本心を探れることにあります。

たとえば「最近、〇〇の件については、××だと思うよ」と言ったのに対して、相手が「なるほど××ですね。気がつきませんでした」と答えたとします。

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上司は部下の報連相を待っていればいいのか 

上司は部下の報連相を待っていればいいのか 

<会社業務に不可欠な報連相>

複数の人が協力して、一人では成し得ないことを達成するためには、意思の疎通が必要です。

これを可能にするのが報告・連絡・相談です。

ですから、会社の中で報連相が適切に行われれば、その会社の中では社員一人ひとりの能力を遥かに超えた成果が得られます。

反対に、報連相が無かったり、いい加減な報連相だったりでは、多くの人が集まり会社として活動することが意味をなさなくなります。

これはすでに世間一般の常識ともいえることです。

それにも関わらず、会社の中には報連相の下手な従業員がいます。

上司は部下の報連相を待っているだけで良いのでしょうか。

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事業内職業能力開発計画 

事業内職業能力開発計画 

<人材育成は投資>

かつては新人教育に熱心だった企業が、即戦力を求めるあまり、人材育成を後回しにする風潮が見られます。

人材を労働力と捉え、教育をコストと考えてしまうと、人材育成は進みません。

しかし、人材育成をコストではなく、投資と捉え積極的に進めなければ、企業の明るい未来は描けません。

<事業内職業能力開発計画>

事業内職業能力開発計画は、企業の雇用する労働者の職業能力の開発と向上を、段階的かつ体系的に行うために事業主が作成する計画です。

この計画の作成は、「職業能力開発促進法」第11条に基づき、事業主の努力義務となっています。

これを受けて、雇用関係助成金の中に人材開発支援助成金が設けられています。

事業内職業能力開発計画の作成は、人材開発支援助成金の一部のコースにおいて支給要件となっています。

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組織づくりの基本原則 

組織づくりの基本原則 

<組織づくりの基本原則>

経営戦略論には、組織を作る上で意識すべき「組織設計の5原則」があります。

組織体制の構築や組織のルール作りには、次の5原則が重要です。

1.専門化の原則 2.権限責任一致の原則 3.統制範囲の原則 4.命令統一性の原則 5.権限委譲の原則

<専門化の原則>

組織作りの基本原則の1つ目は、専門化の原則です。

特定の業務に集中するために分業することをいいます。

組織の中で仕事を分業し、決められた専門分野に特化することで、その分野の業務に習熟しスキルを向上させることが容易となるので、組織の生産性が上がるわけです。

また、個人の役割や求められる成果が明確となりますので、個人の評価も客観的なものとなり、責任感や達成感も高まります。

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資格ハラスメント(シカハラ) 

資格ハラスメント(シカハラ) 

<希望者への支援>

会社が従業員に対して、自己啓発の一環として資格取得を支援するというのは、以前から行われていますし、業務との関連性の強いものは、特に支援を強化しているのが一般です。

あくまでも任意ですから、勉強時間の確保は自己責任です。

ただ、試験の当日や直前に特別休暇が設けられていることはあります。

勉強や受験に必要な経費の一部を会社が負担する場合もありますが、合格を条件として支払われることもあります。

事前申告無しに、合格したら報奨金を請求できるという仕組のこともあります。

いずれの場合も、資格取得を目指すか否かが、完全に従業員の自由に任されているわけです。

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正社員なのに昇給しないのはおかしいのか 

正社員なのに昇給しないのはおかしいのか 

<最低賃金の引上げ>

最低賃金が年々引き上げられ、事業規模に関わらず、賃金上昇圧力が高まっています。

令和2(2020)年10月は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえて、たとえば東京都では1,013円に据え置かれましたが、令和3(2021)年10月には1,041円へと引上げが再開されています。

こうして東京都の最低賃金は、この5年間だけを見ても932円から1,041円へと約11.7%上昇しています。

特に、小売業、製造業、清掃業、警備業などでは、最低賃金付近の時給で勤務している非正規社員が多いことから、最低賃金の急上昇が人件費の増加につながっています。

今年の10月に新規に東京都で採用されたパート社員の時給は、最低でも1,041円ですから、昨年、一昨年に採用されたパート社員は、更に高い時給でなければなかなか納得してもらえません。

最低賃金未満で働いていたパート社員の時給を、最低賃金に引き上げれば済むということではないのです。

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雇用保険マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)

雇用保険マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)

<雇用保険法の改正>

令和4(2022)年1月1日から、雇用保険法の改正によりマルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)がスタートします。

厚生労働省の事業主向けリーフレットによれば、次の適用要件を満たす労働者本人が、ハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができるようになります。

【適用要件】

・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること ・2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること ・2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
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ハラスメント防止規程の落とし穴 

ハラスメント防止規程の落とし穴 

<パワハラの定義の法定>

令和2(2020)年6月1日、労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正され、パワハラの定義が法定されました。

これをきっかけに、就業規則やハラスメント防止規程の見直しをした企業は多数に上ります。

しかしハラスメント対策は、セクハラ対策→パワハラ対策→マタハラ対策の順に進んだ企業も多いことから、社内規程が継ぎ接ぎだらけになっている恐れがあります。

また、社内規程の運用をする中で、新たに意識されるようになった問題も増えてきています。

これを機会に、ハラスメント防止に関する社内規程を、再度見直していただけたらと思います。

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過労死等防止啓発月間 

過労死等防止啓発月間 

<過労死等防止啓発月間>

厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行っています。

この月間は、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため毎年11月に実施されています。

月間中は、国民への啓発を目的として、各都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の削減や賃金不払残業の解消などに向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、土曜日に過重労働等に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」等が行われます。

ここで「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます。

脳・心臓疾患の労災認定基準の改正

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